Dec. 2017 -no.1
そもそも「豆皿」ってどんなお皿?
「豆皿」は手のひらにのる、直径9cm位のお皿のことを指します。ちょっとしたおかずやお菓子を盛りつけたり、小物をのせたりと、たくさんの使い方が楽しめます。もともとは食膳の不浄を払うために小皿に塩を盛った『手塩皿』が起源という一説も。そこからポトペリーの新ブランドは「Teshio(てしお)」と名付けられました。
今回お披露目する形は2種類。「三つ雲」と「さざ波」。
「三つ雲」は、茶菓子や副菜、香の物を美しくのせられるフラットな豆皿。「さざ波」は、ころりとした豆類や汁気のあるものを盛るのに適した深さのある豆皿です。どのようにして出来上がったのか、Teshioが生まれた東京の工房からご紹介します。
デザインが形になるまで
[土モデル:さざ波 / 三つ雲]
はじめに土の塊からサイズや形状を決めていくための土モデルをつくります。
「三つ雲」は風に吹かれて刻一刻と形を変える雲の様に、雲間に隠れて形を変える満月の様に、好きな向きで楽しめる器をイメージしました。
「さざ波」は遠浅の浜辺に打ち寄せるさざ波の様な模様から発想し、形状は豆菓子などの転がりやすい小さな粒もつまみやすいように、深く丸く包み込む器にデザインしました。
形の方向性が決まったら、土と釉薬の相性を探り、作り方を検討する為の試作品作りに移ります。
今回は3種類の土と数種類の釉薬を使用して、板状にスライスした粘土を使用する「タタラ作り」で試しました。それぞれ、色や質感が違うのがわかるでしょうか。
*レリーフの表現と釉薬のバランスは良いか
*イメージ通りの形に焼き上がっているか
*豆皿の雰囲気と釉薬がキレイに見えるか
この3つに注目し、どう作っていけば安定した品質でたくさん作ることができるかなどを検討します。
釉薬の色が綺麗に発色する白さのある磁器土(試作品写真の手前列)を使う事にしましたが、この磁器土では刃物を使って土を切ると、縁に切れ込みが入りやすくうまくいかない事がわかりました。そこで今回の豆皿は「鋳込み(いこみ)」という型を使った成型技法で作ろうと決まりました。
型作りから豆皿ができるまで
「ろくろ」は多くの方が聞いたことがありイメージできるかと思いますが「鋳込み」は全く違った成型方法で、どろどろの土を石膏の型に流し込み乾かして作る方法です。また、型で作るとある程度安定した品質で器を作ることが可能になります。
ただ、型を使っていても、泥の調合・縁の仕上げ・刻印など、細かな部分に人の手はかけられているのです。
まずは鋳込み型から作ります。
陶磁器は型から外し窯で焼く際に、焼きしまりという作用で大きく本体が縮みます。その収縮率を計算しながら型の図面を引きます。次に型のもとになるお皿の原型を図面に合わせて作ります。
皿の原型の周りを囲い、液状の石膏を流し込んで本番のお皿を作る「鋳込みの型」を作ります。繊細な手仕事の工程が多く、図面通りに型を作っても、土を流し込んでみるとお皿が思ったように出来上がらないこともあり、時には皿の原型から作り直すなど数々の調整を繰り返しました。
型ができたらいよいよ鋳込み作業です。上下2つに分かれる型をしっかり固定し、鋳込み口と呼ばれる小さな穴から磁器の素となる泥を流し込みます。ボトルにたっぷり泥を残すことで、型の中の圧力がかかり隅々まで泥がいきわたります。
5分経ったらボトルを外し、さらに約1時間待って、石膏型の中に残してある泥を乾かしていきます。
鋳込みは水を吸収する石膏の特性を利用した作り方です。きちんと石膏型が乾いていないと、出来上がった皿が型から抜けず、無理やり抜いてもきれいな形を保てません。また、石膏型は使うたびに泥の水分を吸収し、新たな水分を吸い取りにくくなるので、注ぎ込んだ後の待ち時間や使用回数なども調整が必要になります。
中身が抜けたら、へそのようになっている鋳込み口をきれいに仕上げ、乾燥させます。その後、縁も整えて更に乾かします。
約800℃で素焼きをした後に施釉し、本焼きです。なるべく均一になるように釉薬を塗っていきます。
今回使う青・緑系の釉薬は流れやすい特性があり、皿の表の縁まわりは淡い色合い、裏の高台周りや皿の中心付近は釉薬が溜まり濃い色が出て、まるで雲のような美しい濃淡が現れます。
本焼き後は、皿をテーブルに置いた時に傷付かないように高台を滑らかに仕上げます。そして、釉薬のはがれやヒビ割れなどがないか検品して完成です。
いつものテーブルも、にぎやかで華やかに
定番のお料理やお惣菜でも豆皿に少しずつ盛るだけで丁寧な特別感が生まれ、おもてなしの場にも活躍できる一品になります。おせち料理の黒豆や栗きんとんも豆皿に盛ると一人分がわかりやすく、お客様も手を付けやすくなります。また可愛らしい豆皿によってお膳の彩りや華やかさもプラスできます。
人が集まる年末年始には枚数があっても便利ですよね。また自然をモチーフにした「三つ雲」や「さざ波」は結婚祝いや引っ越し祝いなど、お祝い事の贈り物にもぴったりです。
食膳の不浄を払う名を持つ豆皿「teshio」。新年を祝う席のおともにいかがでしょうか。